ルビコンを渡れ

 バイトへ行く為に駅で切符を買おうと財布を開いたところ、264円しか入っていないという驚愕の事実が判明したのであります。愕然。向かう駅までは150円なので何とか行く事は可能ですけれども、行ったら最後、確実に帰る事が出来ません。まあ、酔って終電を乗り過ごしてしまった時も歩いて帰って来たという幾多の経験があるので、それ程の事ではないと言えばないのですけれどね。ただ、150円さえ所持していれば10分もしないで帰る事が出来る距離をトボトボと寒空の下、1時間半もかけて帰らなければならない20歳過ぎの男の惨めな様を想像するだけでも泣けてくるではありませんか、私が。
正直、この時点でコンビニのATMから貯金をおろす事を選択肢から外してしまっている私もどうかと思いますけれども、今日はATMから金をおろすならば死を選ぶ、程の覚悟だった訳ですよ。(大袈裟)

 そんな訳で券売機を前に仮病を使って休もうか、と思案している私に神(閃き)は舞い降りたのであります。今日は月末、給料日のはずです。150円などと言うセコイ金額に悩む必要はないのです。
采は投げられた!こうして私はチャリチャリと150円を券売機に投入したのでありました。

 しかし、電車に飛び乗り冷静に考えてみると今まで月末に給料が払われなかった事が意外と多かった事に気が付きました。ましてや2月は短いですから今日が月末の最終日(バイトの)である事を忘れている可能性は低くありません。
ええい、ままよ。どちらにせよ、電車に乗ってしまった時点で勝負は決しているのです。ただ、それがわからないだけなのです。まあ、ダラダラと書いてきて何ですけれども、結局無事に給料は支払われて電車で帰って来る事が出来たのでありました。

 人生は決断の繰り返しだと良く言われます。そして決断などと言う物は終わってみれば本当に些細な物なのだなあ、と今回思ったのであります。余りにも卑近な例で申し訳ないのですけれどもね。なんと言うか、本当に狭いルビコン川でありましたな。

 もちろん、転職であるとか結婚であるとか離婚であるとか留学であるとか、そういった人生における一大イベントの場合は、渡り切る事が出来る自信がある人だけが決断すれば良いでしょうね。途中で溺れたとしても渡る、という人は格好が良いと思いますけれども、『急がば回れ』と言うのもまた一つの選択肢ですよ、と言う私的言い訳集第19巻。