カメの歩く町

カメを見た。体長15?程あるカメだ。道路をトロトロと歩いていた。田舎とは言え交通量はソコソコある。いくらカメの甲羅が固くても車に轢かれればお陀仏だろう。
俺は急いでいた。恐らく、30秒のタイムロスで電車に乗り遅れるだろう。しかし、帰り道でカメの轢死体を見たくはない。俺は迷っていた。そのカメは多分、近所の家のペットであるはずなので、本来ならば家々を訪ねて回るべきなのかも知らないが、さすがにそこまでの時間はなさそうだ。仕方がないので俺は折衷案としてカメを近所の敷地内に移動させておいた。多分その家のペットだと思ったし。
カメは俺が助けてやったのにもかかわらず、「変な所へ動かしやがって」と言う様な目で俺を見ていた。ふん、恩知らずめ。
結局、帰り道にカメの轢死体を見る事はなかった。きっと飼い主が見付けてくれたのだろう。良かった良かった。さて、俺はいつ竜宮城に連れて行ってもらえるのだろうか。(ウミガメじゃないけど)