薄氷の如き勝者と敗者の狭間

 衆議院選挙であった訳ですが、私も怠る事なく祖母を連れて行ってきました。
私が選挙権を得てから投票所があれ程に混んだ事はありませんでしたな。何と言うか、現金なものです。(もちろん、理由がどうあれ投票をしに行く事は当然ではあります)
私は結局、ここで記した事からは考えられない投票をしてしまいました。もちろん、適当にではなくて一応、私なりに悩んだ末の投票でしたので恥ずべき事ではないのですけれど、いまいち釈然としない気分である事は否めなかったりもします。

 その気持ちをより一層強めてくれた出会いが投票所ではありました。私は現在も実家=生家生活なので、投票所は自分の通っていた小学校なのですが、そこで見覚えのない女性に手を振られました。投票を終えた私が、祖母を出口付近で待っていると、視界の端の方で何やら投票所ではない動きをする物があったのです。何の気なしにそちらを見ると、私の方に手を振っている女性が。全く記憶に引っかからない女性だったので視線を素通りさせたのですが(0.01秒)、その女性の動きは止みません(0.01秒)。そこで思考をフル回転させてみた所(0.05秒)、私の後ろには人は立っていない事が明らかになりました(0.01秒)。再び、思考をフル回転させ(0.06秒)、私は最善と思われる方法を導き出しました(0.15秒)。
私はまず、女性から少し視線をずらし、考え込んだ顔をしました(0.5秒)。そして唐突に顔を女性の方に向け軽く頷きながら(0.3秒)、手をポンと叩くかの様な勢いで微笑んだのです(0.2秒)。恐らく、私の微笑みは若干引きつっていた事でしょう。しかし、私の作戦は一応成功した様でした。その女性は満足した様に手を振る事を止め、投票に向かったのです。
私はここで女性より祖母が早く投票を終える事をどれだけ祈ったでしょう。しかし、願いも空しく、恐らく私と同じ年だと思われるその女性の方が高齢の祖母よりも素早い動きでした。ただ、ここで私に救いの手が!その女性は母親と思われる女性と一緒ではないですか。これではその女性も積極的な攻撃(!?)には出て来れないはずです。私は勝利を確信しつつ、すれ違い様に「お久しぶり」とピョコっと手を挙げた攻撃で相手の動きを封じつつ、祖母を連れに再び投票所に入って行ったのでありました。
こうして私は見事に祖母を連れて悠々と投票所を後にする事が出来たのであります。(勝利)

で、結局今に至るまでその女性が本当に誰であったかわからないのでありました。(敗北)