感想文9 迷いと決断 − ソニーと格闘した10年の記録 : 出井伸之

何回この出だしを書いたかわからないが、『迷いと決断』(出井伸之著)読了。単純に面白かった。個人的にはもう少し技術的な話があればより楽しめたのだが、出井氏は技術屋さんではないので仕方がない。大半がコーポレート・ガバナンス(企業統治)への取り組みについてとなっているが、かといってビジネス本と言える程に専門的でもないので、誰でも気軽に読める内容になっている。読んでいると著者が非常に一般人的な事がわかる。雲の上のカリスマ的存在でも技術屋の神様でもなく、サラリーマンが国際企業トップになった苦悩の様なものが滲み出ている。『プロフェッショナル経営者』としてトップに就任した、と書いているが彼は超一流の『プロフェッショナル経営者』という訳ではなかったのだろう。それが、SONYの凋落を招いた(と印象付けさせてしまった)一因でもあったのかも知れない。ただ、それでもあれだけの大企業を10年も率いてきた事、その業績は偉大である。
今現在もSONYの置かれている状況は厳しい。それは業績以上にイメージ的な部分が大きいと思う。残念ながら、この著書からはSONYにおけるその問題点が、近い将来に解決される様には思えなかった。
10年も長い間、SONY程の大企業のトップを務めていれば、後半若干あった愚痴の様な部分があの数十倍はあっただろう。是非、語れる時期が来たら書いて頂きたいものだ。